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東京地方裁判所 昭和42年(行ウ)127号 判決 1976年4月19日

原告 確信運輸株式会社

被告 東京都知事

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告が昭和三九年八月二八日原告に対してした法人事業税及び法人都民税の各更正並びに法人事業税過少申告加算金課賦決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

主文と同旨の判決

第二原告の請求原因

一  原告は、静岡県内に主たる事業所を東京都内に従たる事業所を有する法人であるが、昭和三七年一〇月一日東京都江東税務事務所長に対し、昭和三六年八月一日から同三七年七月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人事業税及び法人都民税(法人税割のみ。以下同じ。)につき、その税額をそれぞれ一九万三六五〇円、一〇万二二四〇円とする確定申告書を提出した。

二  被告は、昭和三九年八月二八日原告の右確定申告に対し、法人事業税及び法人都民税の額をそれぞれ一五八万八二二〇円(うち既納税額三五万九七〇〇円)、七五万四二四〇円(うち既納税額一六万八七五〇円)とする各更正(以下「本件各更正」という。)並びに法人事業税過少申告加算金を六万一四二〇円とする賦課決定(以下「本件決定」という。)をした。

三  しかし、本件各更正は各税額を過大に認定したものであるから違法であり、したがつて、本件決定も違法であるから、原告は本件各更正及び決定の取消しを求める。

第三請求原因に対する認否及び被告の主張

一  請求原因一及び二の事実は認める。同三は争う。

二  被告の主張

1  沼津税務署長は昭和三八年一二月二七日原告に対し、本件事業年度の法人税につき、所得金額二八七九万五七〇〇円、納付税額一一八三万九〇〇〇円とする更正(以下「本件法人税の更正」という。)をし、右更正に係る法人税額を静岡県知事に対し通知した。

2  静岡県知事は、原告の本件事業年度の法人事業税につき、その課税標準額の総額を二八七九万五七〇〇円とする更正をし、その額及び沼津税務署長から通知を受けた本件法人税の更正に係る法人税額を昭和三九年五月二日付をもつて被告に対し通知した。

3  被告は右通知に係る法人事業税の課税標準額の総額及び法人税額を前提として本件各更正をしたから、同更正には何ら違法はない。したがつて、本件決定も適法である。

なお、本件法人税の更正を不服とし、その取消しを求めて原告が提起した訴訟は、昭和五〇年六月二七日原告敗訴(請求棄却)に確定しているから、同更正にも違法はない。

第四被告の主張に対する認否

一  被告の主張1及び2の事実は認める。

二  同3のうち、静岡県知事の更正に係る法人事業税の課税標準額の総額及び本件法人税の更正に係る法人税額を前提として本件各更正がされたこと、本件法人税の更正を不服とし、その取消しを求めて原告が提起した訴訟が被告主張の日に原告敗訴(請求棄却)に確定していることは認めるが、右各金額はいずれも過大認定である。同金額を前提とした場合、原告が東京都に納付すべき法人事業税及び法人都民税の額が、被告の本件各更正のとおりとなることは認める。

第五証拠関係<省略>

理由

一  請求原因一及び二の事実は当事者間に争いがない。

二  そこで、本件各更正が違法であるか否かについて判断する。

1  沼津税務署長が昭和三八年一二月二七日原告の本件事業年度の法人税につき、その所得金額及び納付税額をそれぞれ二八七九万五七〇〇円、一一八三万九〇〇〇円とする更正をし、右法人税額を静岡県知事に通知したこと、静岡県知事が、原告の本件事業年度の法人事業税につき、その課税標準額の総額を二八七九万五七〇〇円とする更正をし、その額及び前記法人税額を昭和三九年五月二日付で被告に対し通知したこと、被告は右通知に係る各金額を前提として本件各更正をしたこと、右各金額を前提とした場合、原告が東京都に納付すべき法人事業税及び法人都民税の額が、被告の本件各更正のとおりとなることは いずれも当事者間に争いがない。

2  ところで 地方税法第七二条の三九第一項の規定によれば、事業を行う法人で事業税の納税義務があるもの(同法第七二条の四一第一項の規定に該当するものを除く。)の申告に係る事業税の課税標準である所得が、法人税の課税標準を基準として算定した事業税の課税標準である所得(以下「基準課税標準」という。)と異なるときは 基準課税標準により、申告に係る課税標準を更正するものとされているから、事業税の更正が基準課税標準によつてされている以上、納税義務者は、右課税標準額の過大を主張して右更正を争うことはできないというべきである。

また、昭和三九年法律第一六九号による改正前の地方税法第七三四条第一項、第二項、第三項、第三二一条の一一第一項の規定によれば、申告に係る法人税額が法人税法の規定によつて更正された法人税額(以下「確定法人税額」という。)と異なるときは、都知事はこれを更正することができるとされているから、申告に係る法人税額の更正が確定法人税額によつている以上、納税義務者は、法人税額の過大を主張して、右都知事の更正を争うことはできないというべきである。

3  そうだとすれば、本件各更正が本件法人税の更正に係る所得金額により静岡県知事が更正した課税標準の総額及び本件法人税の更正に係る法人税額を前提としてされていること前記認定のとおりである以上、原告は、右各金額の過大を主張して、本件各更正を争うことはできないというべきである。のみならず、本件法人税の更正の取消しを求めて原告が提起した訴訟が昭和五〇年六月二七日原告敗訴(請求棄却)に確定していることも当事者間に争いがない。

そうすると、右各金額を前提とした場合、原告が東京都に納付すべき法人事業税及び法人都民税の額か、被告の本件各更正のとおりとなることは当事者間に争いがないから、本件各更正はいずれも適法なものといわねばならない。

三  以上のとおり、本件各更正に原告主張の違法はなく、本件決定も適法というべきである。よつて、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法第八九条の規定をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 三好達 時岡泰 山崎敏充)

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